タイプ1と人気を2分するタイプ2(Type2)についてご紹介します。
タイプ2は乗用タイプのタイプ1に対し、大容量の荷物や人を運ぶために設計されたマイクロバスタイプの車です。
基本的なコンポーネンツはタイプ1から流用されていますので、大きく見えますがホイールベースはタイプ1とほぼ同じです。
また、タイプ2には用途別に様々なバリエーションが用意されており、乗用を中心としたマイクロバスタイプは「ワーゲンバス(海外ではサンバなど)」と呼ばれています。
乗用ではなく、貨物運搬様の後部座席と後部の窓がないモデルが「パネルバン」や「デリバリーバン(略してデリバン)」、リアがトラックのように屋根のない荷台となっているものを「ピックアップ」、キャンプ仕様を「キャンパー」などと概ね呼ばれています。
タイプ2は年式により大きく2つのモデルに分類され、初期のフロントウインドウが2分割されていたものを「アーリー」、その後のフロントガラスが湾曲したものを「レイト」と呼んでいます。
アーリーモデル
アーリーは、1950年から1967年まで作られたモデルで、フロントフェイスは大きくV字型に凹凸があり、フロントウインドウは2枚に分割されています。
フロントウィンドウがオープンするという、他の車にしては珍しい「サファリウィンドウ」という機能を持ったものもあります。
アーリーワーゲンバスはコンビと呼ばれるスタンダードなモデルと、モール類で装飾が施されたデラックスとがあります。
また、窓の数が異なるモデルがいくつか存在し、その窓の数による呼び名もあります。
11W(11ウインドウ)、13W(13ウインドウ)、15w(15ウインドウ)や、丈夫に天窓が複数枚追加されている21W(21ウインドウ)、23W(23ウインドウ)などです。
タイプ2のアーリーモデルは、商用車としてもよく使用されており、企業の宣伝カーはもちろん、救急車(アンビュランス)や消防車といった、緊急車両としても海外では利用されていました。
アーリーモデルのスペック
販売期間:1950年~1967年
ホイールベース:2,400mm
全長:4,250mm
全幅:1,720mm
全高:1,980mm
車両重量:1575kg
レイトモデル
アーリーモデルの後に1968年にモデルチェンジして発売されたのが、「レイト」です。
レイトはデザインが一新され、1968年から1979年まで生産されました。
アーリーの特徴であるV字のプレスはなくなり、代わりに角丸スクエアなプレスがされ、その違いは歴然としています。
フロントウインドウも湾曲したベイウインドウという1枚ものになりました。
レイトモデルの中でも1972年までのモデルは「アーリーレイト」と呼ばれ、バンパーの形状に丸みがあり、ウインカーの位置も下部(ヘッドライト下、バンパーの上)にあります。
1973年からウインカーの位置がライトの上に移設され、バンパーも頑丈な5マイルバンパーとなります。
これは「レイトレイト」と呼ばれたりします。
レイトモデルのスペック
販売期間:1968年~1979年
ホイールベース:2,400mm
全長:4,505mm
全幅:1,720mm
全高:1,955mm
車両重量:1380kg
様々なモデルが存在するタイプ2
タイプ2は先にも紹介したように、マイクロバスタイプの他に、さまざまな仕様のモデルが存在します。
マイクロバス
一般に人を乗せる仕様のタイプです。多くの人はこのマイクロバス(ワーゲンバス)を最もイメージするようです。
3列シートで7人乗りから9人乗りまであります。
サードシートは基本的に3人掛けですが、セカンドシートが2人掛けと3人掛けとがあります。
また、フロントシートは3人掛けのベンチシートと、2人掛けで「ウォークスルー」と言う、フロントシートからセカンドシートへの移動が可能なタイプがあります。
これらの組み合わせにより、乗車定員が7人から9人となっています。
キャンパー
キャンパーはその名の通り、キャンピングカー仕様のタイプ2です。
キャンパーは社内に水道やガスなどの調理器具、収納、ベッドなどを備えているため、乗車定員は5人になります。
アーリーのキャンパーは、車体中央の屋根部が正方形に一部ポップアップ(人が立てる程度)します。
レイトになると、更に進化し、屋根が大きく前方(もしくは後方)が大きく開き、居住性が高まるだけでなく、2段ベッドにもできます。
タイプ2をキャンパー仕様にするのは、フォルクスワーゲンではなく、バイキング社やウエストフォリア社が行っていました。
そのため、キャンパー仕様に手掛けた会社や手掛けた年代などにより、細かな仕様は様々です。
キャンパーに乗って家族でキャンプに出かけるのは、いつの時代もみんなのあこがれでした。
タイプ2のキャンパーも仕様が凝っているだけに、タイプ2の中では価格も最も高額です。
パネルバン
パネルバンは、いわゆる商用車仕様のタイプ2です。
後部は荷室となるため、後方はサイドガラスがありません。
基本的にはフロントのみの座席(一部、折りたみ可能なセカンドシートが付いたものもあり)となっています。
荷物を運ぶ車ということから、デリバリーバン(通称:デリバン)とも呼ばれ、日本でも商用車として愛用されていました。
ガラスのない広いサイド面を利用し、各社が会社のロゴや宣伝文句などを入れたりしていました。
ピックアップ
後部がトラックのような積荷仕様になっているのが、「ピックアップ」です。
ピックアップにはフロントシートのみの「シングルピック」と、セカンドシートまである「ダブルピック」とがあります。
「シングルピック」は前3人乗り、「ダブルピック」前後各3人の6人乗り!です。
こういう車を仕事に使うというのは、相当おしゃれで良いと思います。
タイプ2こぼれ話
空冷エンジンのタイプ2は西ドイツ本国では1979年で生産終了しますが、実はブラジルでは2005年まで製造されていました。
また、2006年から2013年まで、水冷エンジンを積んだタイプ2も製造されていました。
いずれもレイトタイプのタイプ2ですが、日本にも輸入されています。
水冷エンジンのタイプ2は、フロントにラジエターを抱えるため、ちょっと不思議なデザインになってはいますが。
なお、正統なタイプ2の後継は、バナゴン(初期はカラベルと言う名称)でしょう。
バナゴンは1979年にデビューしますが、1983年までは空冷エンジンを積んでいます。
タイプ2よりは現代の車に違いですが、エンジンは空冷のフラット4を積んでいるため、ワーゲン独特の空冷エンジンの乗り心地が楽しめます。
タイプ2/ワーゲンバス/アーリー/レイト/マイクロバス/コンビ/パネルバン/デリバリーバン/ピックアップ/シングルピック/ダブルピック/DX/11W/13W/15W/21W/23W